2014年６月28日午後１時20分より関西学院大学KGハブスクエア大阪梅田教室にて、異文化経営学会関西部会の設立総会が開催され、馬越恵美子異文化経営学会会長よりご挨拶を賜った。関西部会への期待を込めた会長からの激励を受け、感激致した次第である。

2014年３月における福岡での九州部会、同年５月における名古屋での中部部会に次ぎ、地方部会としては３番目に発足したが、研究会を単独開催したのは関西部会が初となる。

　設立総会の後、小野豊和先生が司会役を務められ、関西部会研究会に移行した。小野先生を司会者に指名させて頂いたのは、異文化経営学会で初の地方部会を設立されたという熱意に敬意を表してのことである。

　設立総会が始まる前から30名近くが集い、研究会中は参加申込み者数と一致して32名が出席された。

　第１報告では、安室憲一先生（大阪商業大学）が「異文化経営学研究の系譜と課題」と題し、40分という報告時間を厳守して、異文化経営学への発展過程を体系的に説明された。具体的には、文化論、経営学、国際比較経営学、国際経営管理論といった学問領域の生成と発展の歴史を洞察され、異文化経営学研究の発展のためにはインクルーシブ・デザインの方法論を取り入れるべきと唱えられた。その後、討論者の藤澤武史先生から、安室先生による理論サーベイの完璧さが評価され、異文化シナジー管理という研究を踏まえて「グローバル経営論VS.異文化経営論」への問題提起に成功していることが強調された。安室学説が果たしてFayerweather, J. 説を超えるかどうか、明確にしてほしいという要望が出された。

　第２報告は、笹谷秀光氏（株式会社伊藤園取締役CSR推進部長）が「グローバル人材育成のためのESDを活用した異文化経営戦略―異文化コミュニケーション力強化と世界標準の「おもてなし経営」のために―」という論題にて、予定報告時間を超え、熱弁を振るわれた。新しい研究テーマゆえに、配布資料には分かりやすく説明が施され、ESDによるグローバル人材育成と異文化経営戦略のあり方が具体例を伴って解説された。中でも、おもてなしアクションプランはユニークであった。トリプルSによる異文化経営強化が提案され、締めくくりとなった。その後、古沢昌之先生（大阪商業大学）が討論者を務められた。「CSR概念の明確化」、「CSRの戦略的展開の体系化」、「企業のベストプラクティス」の提示に報告者の貢献が認められると指摘し、他方、学術性を高めるための方法論も提示された。こうした討論者としてのあるべき姿に、会場を埋め尽くした参加者も大いに頷いた。

　研究報告に続き、濱田昌子先生（日本舞踊家・芸術文化プロデューサー、兵庫県日本文化教育振興会理事）をゲストにお迎えして、「日本の伝統舞踊の国際移転」という講演テーマに沿って、自らのヨーロッパやタイなどにおける日本伝統舞踊の国際普及活動を交えて、その国際移転の在り方を語って頂いた。タイでの公演時に日本と現地の伝統舞踊をコラボレーションした映像と音声も、講演には効果的であった。フランスをはじめヨーロッパの中でも日本の伝統舞踊を高く評価する声が割に多いが、テーマがはっきりしていて、かつストーリー性がないと、いくら踊りに芸術性があっても、その公演は成功しにくいと示唆された。日本人として異文化適応の重要性を如実に意識させられた講演であった。会場内からも質問が寄せられ、濱田先生は学会にふさわしく丁寧に答えられた。後日、御本人曰く、学会という異文化に溶け込めたことが印象に残ったとのこと。

　懇親会には29名が参加され、研究会から懇親会への移動参加率は９割に達した。各種部会を長年担当してきたが、研究会出席後の懇親会への参加率９割という例は過去にない。まさに望外の喜びとするところである。

　関西で第１回目ということもあって、馬越恵美子会長、プログラム委員長の薄上二郎理事、本部事務局長の高橋俊一理事、九州支部長の小野豊和理事ら、東京、熊本、名古屋など関西圏外から多くの方に来て頂いた。遠方からの参加者が多く、主催側としても大変勇気付けられた。加えて、古沢昌之先生から力強い御支援を仰ぎ、関西地区で新入会者が急増し、その方たちに会場へお越し頂いた。古沢先生に御礼申し上げたい。むろん、報告者、討論者、ゲスト講演者をはじめ、お集まり頂いた皆様方に感謝申し上げたい。

　最後に、この場をお借りして、異文化経営学会第２回関西部会を御案内申し上げたい。2015年６月20日（土）13時半より関西学院大学KGハブスクエア大阪梅田教室を第１候補会場として、第１回と同様に、２研究報告、１ゲストスピーカー（交渉中）という順で単独開催されることが確定した。９月より報告者２名を募集する予定となっている。


2014年7月7日

異文化経営学会 関西支部長
関西学院大学
藤澤 武史