関西部会

異文化経営学会 第10回関西部会のご報告

2020/09/26
理事・関西部会長 古沢 昌之(近畿大学)
2020年9月26日(土)、異文化経営学会第10回関西部会が開催された。第10回部会は本来2月29日に大阪商業大学での実施を予定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、やむなく延期となった。今回、オンラインではあるが、部会を開催できたことを嬉しく感じるとともに、馬越会長はじめ関係者の皆様方のご支援・ご協力に対し、厚く御礼申し上げる次第である。
参加者は北海道から九州まで44名を数え、関西部会としての過去最高を更新した。以下、詳細については、南山大学・林尚志先生の寄稿文をご一読願いたい。なお、第11回関西部会は本年12月19日(土)にオンライン方式で開催予定である。

<報告と所感> 林 尚志(南山大学経済学部教授)
異文化経営学会第10回関西部会に参加した。大阪商業大学・崔圭皓先生の総合司会のもと、近畿大学・古沢昌之先生(本学会関西部会長)から開会のご挨拶を頂き、引き続き、第1セッションとして古沢先生より「日本における外国人留学生の就職問題に関する研究―大学のキャリアセンターへのアンケート調査に基づいて―」と題するご報告を賜った。同報告では、既存の諸研究で用いられてきた“企業”ないし“留学生本人”に対する調査ではなく、国内各大学の“キャリアセンター”へのアンケート調査結果に基づき、因子分析や重回帰分析を用いて、外国人留学生に関する (1)就職状況、(2)就職を巡る問題点、(3)大学による支援策、(4)就職に“成功”する留学生の特性等に関して考察が行われた。その結果、たとえば大学による就職支援策として「留学生限定の施策」を実施した場合、これが「留学生の就職率」に有意なプラスの影響をもたらす点が指摘される一方、これら施策については限られた範囲でしか実施されていない旨が併せて報告された。また、「就職に成功する留学生」の特性として、「日本人性」(日本語能力、日本的な態度・行動等)が確認されたことが論じられ、この点に関しては、コメンテーターのIoT Link Labo・田井昭先生から、当該項目の具体的内容や含意について質問が示された。さらに馬越会長をはじめ、他の参加者も含めた質疑の中で議論が深められた。すなわち、日本企業は留学生に対しても「まずは日本人と同じことができること」を求める傾向があり、「“ダイバーシティを活かす”ことが未だ重視されていない」という日本企業の今後の課題を示唆する結果が得られたと考えられる。
続く第2セッションでは、北海商科大学の堤悦子先生と折尾愛真短期大学の市川順一先生より、「企業家マインドと地域性―Covid-19以降の起業マインドの涵養―」と題するご報告を頂いた。ベンチャー企業、ないしスタートアップ企業の生成・成長に関わる“企業家マインド”に注目し、日米の歴史的背景・政策的経緯と関わる制度設計の違い、スピンオフ元である企業(パナソニック)内に存在した企業風土、近接する商都・福岡とは対照的な工業都市・北九州における企業家マインドの不足等、関連する諸要因について興味深い議論が数多く示された。コメンテーターの兵庫県立大学・内田康郎先生からは、これら議論を肯定的に理解されつつも、(1)キーワードである“企業家マインド”や“地域性”が明確に定義されていない、(2)既存の諸研究の考察結果をふまえたリサーチクエスチョンの設定がなされていない等の課題が指摘されたが、その一方、報告中にその一部のみが示された「“起業機会に直面している人々”に関する4類型」の展開可能性に関して期待が寄せられた。また、馬越会長からは、「企業家マインドの涵養に関わる要因」には、(ア)教育や行政支援などによって事後的に育てることが可能なもの、(イ)本人の幼少時の苦労や経験等と関わる基層的なもの、などの様々な要因が重要な意味を持ちうることをふまえつつ、企業家マインドに関する考察をさらに深めることが期待されるとのお話を頂いた。
そして、研究会の最後には、馬越会長から2本の研究報告に対するご所感が述べられるとともに、コロナ禍が当学会のさらなる発展に向けた“好機”となるよう願っていますとのお言葉を頂戴した。
研究会終了後は、各大学・各社のコロナ問題への対応に関する情報交換が行われ、(ア)4月の年度開始以降、各大学や専門学校等において、特に新入生の学習意欲に配慮する形でオンライン、対面授業の双方で試行錯誤が重ねられてきた状況、(イ)企業において、現場・オフィスと在宅勤務の役割分担など、参加者各位が関わってきた様々な取り組みに関して貴重な意見が交わされた。



と き 2020年9月26日(土)14:00〜17:00 ※Zoomによる開催
内 容
<総合司会>大阪商業大学 崔 圭皓 氏

【開会挨拶】14:00〜14:05 

近畿大学(本学会理事・関西部会長) 古沢 昌之 氏

【研究報告①】14:05〜14:55(報告=25分、コメント=5分、コメントへの応答=5分、全体質疑応答=15分)

・テーマ 「日本における外国人留学生の就職問題に関する研究―大学のキャリアセンターへのアンケート調査に基づいて―」
・報告者 近畿大学 古沢 昌之 氏
・司会・コメンテーター IoT Link Labo 田井 昭 氏

=休憩(14:55-15:05)=

【研究報告②】15:05〜16:05(報告=30分、コメント=5分、コメントへの応答=5分、全体質疑応答=20分)

・テーマ 「企業家マインドと地域性―Covid-19以降の起業マインドの涵養―」
・報告者 北海商科大学 堤 悦子 氏・折尾愛真短期大学 市川 順一 氏
・司会・コメンテーター 兵庫県立大学 内田 康郎 氏

【総括コメント】(16:05〜16:10)

・桜美林大学(本学会会長) 馬越 恵美子 氏

=休憩(16:10〜16:20)=

【オンライン交流会】(16:20〜17:00)

・各大学・各社のコロナ問題への対応に関する情報交換

以 上



以下の画像をクリックすると大きなお写真をご覧いただけます。


* * * * * * * * * * * * * * * *
<<関西部会一覧へ戻る
このページのトップへ▲