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国際人的資源管理(IHRM)部会
異文化経営学会 第4回国際人的資源管理(IHRM)部会のご報告
2025年1月11日(土)、異文化経営学会第4回国際人的資源管理(IHRM)部会が「グローバル人的資源管理について考える」を統一テーマとしてオンラインで開催された。ご多忙中にも関わらずご出席いただいた会員の皆様、そしてゲスト講師として貴重な事例発表を賜ったパナソニック インダストリー株式会社CHRO・梅村 俊哉氏に厚く御礼申し上げる次第である。
以下、詳細については、筑波大学大学院博士後期課程の熊野栄氏のご寄稿文をご一読願いたい。
なお、国際人的資源管理(IHRM)部会は今後も時宜にかなった統一テーマを設定し、年1回オンラインで開催していく予定である。引き続いてのご支援・ご協力をお願い申し上げる次第である。
<報告と所感>筑波大学大学院博士後期課程 熊野 栄
2025年1月11日(土) 14:00〜17:30、Zoomにて第4回国際人的資源管理 (IHRM) 部会が「グローバル人的資源管理について考える」を統一テーマとして開催された(参加申込者は37名)。今回の総合司会は高崎経済大学・金艶華先生が、研究報告セッション司会は立命館大学・ソリンガ先生が各々担当した。
IHRM部会長・古沢昌之先生(関西学院大学・本学会理事)の開会挨拶の後、古沢昌之先生より「グローバル人的資源管理に関する実証研究報告—日本企業と欧米企業へのアンケート調査に基づいて—」、株式会社リロエクセル・村田敏也氏(本学会理事)より「高コンテクスト文化を超えて—グローバル人的資源管理における外国籍社員や次世代への対応—」、パナソニックインダストリー株式会社CHRO・梅村俊哉氏より「想いを、動かせ。—社員の“想い”を起点とする人財戦略の推進—」の3つの研究報告が行われた。
古沢昌之先生の報告は、2024年に実施した日本企業と欧米企業へのアンケート調査を通して、多国籍企業の国際人的資源管理施策とその成果の最新の動向を探るとともに、「グローバル人的資源管理モデル」の再検証を行い、今後の国際人的資源管理のあり方に示唆を与えるものであった。調査は日本または欧米に本社を置く多国籍企業を対象に実施され、140社(日本企業=84社、欧米企業=56社)から有効回答があった。分析の結果、①国際人的資源管理における「規範的統合」に向けた取り組みは「HR成果」の「グローバルな企業文化・信頼関係の構築」を促進する、②国際人的資源管理における「制度的統合」に向けた取り組みは「HR成果」の「国境を越えた人材の活用・登用」を促進する、③「HR成果」は「グローバル・イノベーション成果」を促進する、という3つの仮説はいずれも支持された。参加者とのQ&Aセッションでは、日本企業と欧米企業の格差の背景、日本企業における規範的統合と制度的統合の変革、さらにはクロスボーダーM&Aで加わった海外子会社への対応、日本企業のトップのコミュニケーション・言語能力の問題、国境を越えた人材活用・登用についての意見交換が行われた。
村田敏也氏の報告は、企業内研修からの示唆をもとに、外国人社員と日本人若手社員への課題には共通点があるのではないかという仮説の検証を行った。日本の中間管理職(XY世代)386人と大学生を含む若手社員(Z世代)75人へのアンケート調査を実施した結果、仮説は支持されなかった。Z世代はリスクを取ることを躊躇し、安定的な成果を求める傾向が強くなる。また、効率的な成果を求める一方で、柔軟性や創造性を活かしたリスクテイクが苦手であることが示唆された。参加者とのQ&Aセッションでは、日本における高コンテクスト文化と現地法人の日本人管理職の細かい管理とのギャップについての意見交換や、若い世代に対する調査方法を巡る議論が行われた。また、日本における高コンテクスト文化とXYZ世代の位置づけ及び経験値に関する意見交換がなされた。
梅村俊哉氏の報告では、パナソニック インダストリーの変革について、事業領域やタレントマネジメントの詳細が説明された。タレントマネジメントコミッティーによる個別的人材開発、PIDアカデミー、アカデミーNEXT、中国での現地完結型マネジメントの現状、独自のジョブディスクリプション策定、異動・昇格における「公募型異動」制度によるキャリアオーナーシップや組織力の向上、「想い⇒挑戦」文化の醸成、研修情報プラットフォーム「マナビバevery」の開設などが紹介された。さらに、ミドルマネジメント支援としてのマネジメントコーチ制度の導入、CHROキャラバンによる現場社員との直接の語り合い、社外へのHRブランディング&コミュニケーションの展開についても述べられた。Q&Aセッションでは、紹介された制度の詳細や企業理念(特にMission、Valueの制定)、人事戦略、外国人メンバーについて質問があった。
その後、村田氏がコーディネーターとなり、ブレイクアウトセッションが行われた。部会参加者が5グループに分かれて「グローバルな人的資源管理はどうあるべきか」をテーマに討論を繰り広げた。各グループからは以下の意見が挙げられた。「実践的立場からの視点で、手触り感の重要性とデータに基づく議論、及びデータの質を意識する必要がある」「DE&Iを含めた人的資本経営に当事者を入れてほしい」「日本企業の遅れを冷静に受け止めつつ、10年間での変化も捉える必要がある」「日本企業でのリーダーシップの在り方の難しさ」「理念を行動に紐づけているかが重要である。シンプルさと効率、コミュニケーションが必要である」「コンピテンシーの重要性」「日本企業が劣位であることに対する日本企業の自覚」「米国企業と日本企業の企業経営の違い」「M&A後の価値観の統合の難しさ」「海外の有能人材獲得に向けた課題」などが挙げられた。
最後に、学会長の馬越恵美子先生(桜美林大学)より、「今回の部会では、模範的リサーチに基づくデータと実践に基づく手触り感、そして最新の情報という3つの視点からの発表が行われたことが良かった」との評価と、パナソニック インダストリーの「grow your mindset」についての賞賛があった。
本部会は、アカデミックな発表と現場そして最新のトレンドの三方からの発表を通して、グローバル人的資源管理の今後の在り方についての貴重な学びの機会となった。
1. と き 2025年1月11日(土) 14:00〜17:30 ※Zoomによる開催
2. 内 容
・統一テーマ:「グローバル人的資源管理について考える」
<総合司会> 高崎経済大学・金艶華 氏
<研究報告セッション司会> 立命館大学・ソリンガ 氏
【開会挨拶】14:00〜14:05(5分)
・関西学院大学・古沢 昌之 氏 (本学会理事・国際人的資源管理(IHRM)部会長)【研究報告①】14:05〜14:45(報告 25分、質疑応答 15分)
・報告者 関西学院大学・古沢 昌之 氏 (本学会理事・IHRM部会長)「グローバル人的資源管理に関る実証研究報告—日本企業と欧米企業へのアンケート調査に基づいて—」
=休憩 14:45〜14:55(10分)=
【研究報告②】14:55〜15:35(報告 25分、質疑応答 15分)
・報告者 株式会社リロエクセル・村田 敏也 氏 (本学会理事)「高コンテクスト文化を超えて—グローバル人的資源管理における外国籍社員や次世代への対応—」
=休憩 15:35〜15:45(10分)=
【研究報告③】15:45〜16:35(報告 30分、質疑応答 20分)
・報告者 パナソニック インダストリー株式会社CHRO・梅村 俊哉 氏「想いを、動かせ。—社員の“想い”を起点とする人財戦略の推進—」
=休憩 16:35〜16:45 (10分)=
【ブレイクアウトセッション】16:45〜17:10(進め方の説明 5分、グループ討議 20分)・コーディネーター 株式会社リロエクセル・村田 敏也 氏 (本学会理事)