九州部会

異文化経営学会 第6回九州部会研究会のご報告

2019/03/21
理事・九州部会長 小野豊和

6回目を迎える九州部会は2019年3月9日(土)東海大学熊本キャンパスを会場に31人の参加者を得て開催した。総合司会は東海大学経営学部観光ビジネス学科の李昭知先生。小野九州部会長による馬越恵美子会長の紹介から始まり、3つの報告と2つの招聘講演、さらに講演者とのミニ鼎談という過密スケジュールだったが時間通りに進めることができた。

第一報告は兵庫大学・李良姫先生の「民間信仰の観光ビジネス戦略〜青森恐山のイタコを中心に〜」。民間信仰と観光に焦点を当てた研究で、青森恐山イタコを中心に沖縄のユタ、韓国の占匠などが紹介された。祈祷師の後継者問題、観光人口減少、若者の変化など興味深い報告だった。フロアーから「教祖が観光推進役か、観光が教祖を利用するのか‥」などの質問がでた。

第二報告は亜細亜大学・佐脇英志先生で「異文化経営とネットワーキング〜フィリピン日本人起業家のケース〜」。海外留学志向減少傾向の中、特にフィリピンを取り上げ、出かけて行った若者が起業家として成功した事例、企業家同士の連携による相乗効果など。一般論として目的意識に乏しい大学生が多い昨今、英語学習と仕事を目指す学生の行きたい国第一のフィリピン事情は傾聴に値した。成功の蔭の失敗事例も提示しながら、授業を通じて挑戦意欲喚起を狙っている報告者の姿勢が頼もしかった。

第三報告は九州部会長が「赤ちゃんポスト」(Baby Box)に対する認識が日本で根付かない道徳心の齟齬 〜熊本・慈恵病院の取り組みから〜」について報告。慈恵病院が日本で初めて設置した「あかちゃんポスト」事情を説明。社会は予期せぬ妊娠による子ども遺棄に対して大人の責任を第一に追及、結果として子の命が守られない昨今の日本の社会事情にはChild Firstの思想欠如も原因、宗教事情の違いなども説明。欧米で普及しているBaby Box、養子縁組のあり方など重い話題だった。熊本はキリシタン宣教の土地柄もあり明治時代から始まったハンセン病救済事業の歴史についても報告があった。

招聘講演は熊本地震被災者支援を目的に330回(予定も含む)実施した音楽を通じたボランティアがどのような背景で行われたか。様々なアーティストを束ねる苦労、コーディネーター役としてまとめ上げてきた講師の情熱が感じられた。第2講演は被災した西原村元村長で、自らの体験(体感)に基づき、地震直後にとった行動から村の年寄たちにやる気と生き甲斐を持たせる取り組みの話。中でも熊本カトリック女性の会の皆さんとの出会いがきっかけで、被災という辛い思いが、もう一度何かをしようと爺婆に希望に変わり、NPO爺婆産業振興協議会設立に至った話はまさにドキュメンタリー報告だった。「人生は最期の10年が大事」と考え村民200人の事業を計画中とのこと。その後、講演者2人と九州部会長でミニ鼎談を試みた。テーマは「熊本地震における支援と受益を繋いだ絆とは」で、熊本地震の被災者でもある支援者と受益者を繋ぐ絆の原点を探った。

全体講評は東海大学経営学部に着任した岩本勝幸先生にお願いした。「民間信仰、若者のグローバル展開、命のあり方とその政策など、これぞ異文化と言わんばかりの報告に驚いた。特に海外に出て活躍している若者の姿は、学生に聞かせたかった。また熊本地震の現場からの生々しい報告は東日本大震災の研究とはまた違う姿を確認でき新鮮だった。早速入会し九州部会長と学生のためのワークショップなどを考えたい」と。

懇親会では熊本地元で活躍するご婦人方との交流もできた。西日本新聞熊本総局長、読売新聞熊本支局長も参加され関心を持っていただいた。以下は当日のプログラムと写真。

1.開催日:

  2019年3月9日(土)13:15〜17:15 

2.会 場:

  東海大学<熊本キャンパス>Siesta(シエスタ)<熊本市東区渡鹿9-1-1>
  ◎総合司会:李 昭知(東海大学経営学部観光ビジネス学科助教)

3.挨 拶 13:15〜13:20

  ◎開会挨拶と会長紹介:九州部会長 小野豊和(元・東海学教授)
  会長:馬越恵美子(桜美林大学教授)

4.研究報告① 13:20〜13:55(報告25分、質疑応答10分)

  ◎報告者:李 良姫(兵庫大学教授)
  ◎テーマ:民間信仰の観光ビジネス戦略〜青森恐山のイタコを中心に〜

5.研究報告② 13:55〜14:30(報告25分、質疑応答10分)

  ◎テーマ:異文化経営とネットワーキング〜フィリピン日本人起業家のケース〜

6.研究報告③ 14:30〜15:05(報告25分、質疑応答10分)

  ◎報告者:小野豊和(元東海大学教授)
  ◎テーマ:「赤ちゃんポスト」(Baby Box)に対する認識が日本で根付かない道徳心の齟齬
 〜熊本・慈恵病院の取り組みから〜

< 休   憩 >


7.招聘講演① 15:20〜16:10(50分)

  ◎演題:「熊本地震復興祈念コンサート誘致活動の縁の下の力持ちとして
  〜熊本で初めて合流する個性豊かなアーティストたちの能力を最大限に発揮させ、
  そのハーモニーで被災市民に感動を与えてきたボランティア集団〜」
  ◎講師:小野裕幸氏 
  くまもと音楽復興支援百人委員会メンバー/「こどもデザイン研究所」代表取締役

8.招聘講演② 16:10〜16:40(30分)

  ◎演題:「西原村の爺婆が米作りに再挑戦できた支援の輪」
  ◎講師:加藤義明氏(元西原村村長、NPO阿蘇、爺婆産業振興協議会理事長)

9.ミニ鼎談: 16:40〜17:05(25分)

  講演者2人+九州部会長
  ◎テーマ:「熊本地震における支援と受益を繋いだ絆とは」

10.全体講評: 17:05〜17:15(10分)

  岩本勝幸(東海大学経営学部准教授)

11.閉会挨拶:小野豊和(九州部会長)


12.懇親会:17:15〜18:30 同会場 (会費2,500円)


*来年の研究会は 2020年3月14日(土)の予定
本件は東海大学総合研究機構の助成を受けた研究研究集会



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